この記事の要点
- 損益分岐点の計算式は「3年累計保険料増額 + 免責金額 ≦ 修理費見積もり」なら保険使用が有利
- 3等級ダウン事故では3年間事故有係数が続き、累計増額は等級によって約6.6〜12.3万円(編集部試算)
- 等級が高いほど損益分岐点が低くなる傾向があり、20等級なら免責5万円で約11.6万円が目安(編集部試算)
- 飛び石・盗難など1等級ダウン事故は事故有係数が1年のみで影響が大幅に小さい
保険を使うか・使わないかは「3年累計増額+免責金額 vs 修理費」で決まる
「保険を使うと損になる」という話は正しい場合も間違いの場合もある。判断の軸は一つだけだ。
損益分岐点の計算式(編集部まとめ)
3年累計保険料増額 + 免責金額 ≦ 修理費見積もり → 保険使用が有利
この不等式が成り立つ場合にのみ、保険を使う経済的メリットがある。逆に修理費が左辺を下回るなら、自費修理の方が3年間のトータルで安くなる。
| 判断 | 条件 |
|---|---|
| 保険を使う | 修理費見積もり ≧ 3年累計増額 + 免責金額 |
| 自費修理 | 修理費見積もり < 3年累計増額 + 免責金額 |
「3年」という数字の根拠は次の節で説明する。まず計算式の構造を頭に入れてから読み進めると理解が早い。
等級が下がると3年間保険料が上がり続ける仕組みを理解する
自動車保険(任意保険)の保険料は「ノンフリート等級別料率制度」で決まる。等級は1等級から20等級まであり(2026年9月時点)、等級が高いほど保険料の割引率が高い。
事故の3区分:どれに当たるかで影響がまったく変わる
| 区分 | 等級の変化 | 事故有係数の期間 | 主な例 |
|---|---|---|---|
| 3等級ダウン事故 | 3等級低下 | 3年間 | 対人・対物賠償保険使用の事故、一般的な自損事故で車両保険使用 |
| 1等級ダウン事故 | 1等級低下 | 1年間 | 飛び石・盗難・いたずらで車両保険のみ使用 |
| ノーカウント事故 | 変化なし | なし | 人身傷害・搭乗者傷害保険のみの事故、もらい事故など |
出典:損保ジャパン公式(2026-09-03取得)・おとなの自動車保険公式(2026-09-03取得)
事故有係数適用期間は上限6年で、複数事故があると加算される。3等級ダウン事故が1回なら3年間、2回起こせば6年間(上限)事故有係数が続く。
「事故有係数」とは何か
同じ等級(例:15等級)でも「無事故」と「事故有」では割引率が大きく異なる。15等級の場合、無事故は53%割引だが、事故有は28%割引にとどまる。この差が3年間続く。
新規加入時の等級は原則6等級からスタート(一定条件でセカンドカー割引適用時は7等級)。
等級×免責金額で試算すると損益分岐点はこうなる(編集部試算)
以下の表は、2026年9月時点の各保険会社の等級別割引率(損害保険料率算出機構の参考純率ベース)を用い、年間保険料を等級別に推計して試算した編集部算出の数値だ。実際の保険料は保険会社・車種・年齢・補償内容によって異なるため、あくまで判断の目安として参照すること。
3等級ダウン事故:等級×免責金額別 損益分岐点(修理費の目安)
| 現在の等級 | 免責0円 | 免責5万円 | 免責10万円 |
|---|---|---|---|
| 20等級 | 約6.6万円 | 約11.6万円 | 約16.6万円 |
| 15等級 | 約11.9万円 | 約16.9万円 | 約21.9万円 |
| 10等級 | 約12.3万円 | 約17.3万円 | 約22.3万円 |
| 6等級 | 約13.5万円 | 約18.5万円 | 約23.5万円 |
(編集部試算。条件:各等級の年間保険料を公表割引率から推計し、3等級ダウン後の事故有等級適用で3年累計増額を算出)
読み方:自分の現在の等級と免責金額のセルを見て、修理見積もりがその金額を上回るなら保険使用が有利、下回るなら自費修理が割安。
例えば、20等級で免責5万円の契約なら、修理費が約11.6万円以上のときに保険を使うメリットが生まれる。10万円の修理なら自費の方が得、15万円なら保険使用が有利という計算になる。
1等級ダウン事故(飛び石・盗難など)の場合、事故有係数の適用が1年のみのため、損益分岐点は3等級ダウン事故より大幅に低くなる。免責0円であれば損益分岐点が非常に低く、多くのケースで保険を使うメリットが大きい。詳細は後の「1等級ダウン事故」の節で解説する。
割引率の数字で分かる:等級が高いほど損益分岐点が低くなる理由
損益分岐点が等級によって変わる理由は、高等級ほど保険料の水準が低く、3等級ダウン後の増額幅が相対的に小さくなるためだ。
| 等級 | 無事故の割引率 | 事故有(3等級ダウン後)の割引率 | 割引率の差 |
|---|---|---|---|
| 20等級 | -63% | -44%(17等級・事故有) | 19ポイント差 |
| 15等級 | -53% | -33%(12等級・事故有) | 20ポイント差 |
| 10等級 | -46% | -14%(7等級・事故有) | 32ポイント差 |
| 6等級 | -13% | +38%(3等級・割増) | 51ポイント差 |
(2026年9月時点・損害保険料率算出機構の参考純率ベース。出典:三井ダイレクト損保・チューリッヒ各公式サイト)
6等級で3等級ダウンすると3等級(割増38%)になる。無事故の割引13%から割増38%への逆転になるため、影響が極めて大きく損益分岐点も高くなる。
主要等級の割引率一覧(2026年9月時点・参考純率ベース)
| 等級 | 無事故 | 事故有 |
|---|---|---|
| 20等級 | -63% | -51% |
| 17等級 | -55% | -44% |
| 15等級 | -53% | -28% |
| 12等級 | -50% | -22% |
| 10等級 | -46% | -19% |
| 7等級 | -27% | -14% |
| 6等級 | -13% | − |
(出典:三井ダイレクト損保・チューリッヒ公式サイト 2026-09-03取得)
1等級ダウン事故(飛び石・盗難)は損益分岐点が大幅に下がる
飛び石でフロントガラスが割れた、駐車中に盗難に遭った——こうしたケースで車両保険を使うと、事故区分は「1等級ダウン事故」になる。
1等級ダウン事故の特徴:
- 等級は1等級だけ下がる
- 事故有係数の適用は1年間のみ(3等級ダウン事故の3年と比べて大幅に短い)
- 修理費が数万円程度でも保険使用が有利になりやすい
1等級ダウン事故の損益分岐点は3等級ダウン事故と比べて大幅に低く、免責0円なら少額の修理費でも保険使用が有利になりやすい。フロントガラスの交換(相場数万円程度)であっても保険を使った方が経済的なケースが多い。
ただし、免責金額が高い(5〜10万円)設定の場合は逆転するケースもあるため、自分の免責金額を確認することが大前提だ。
一般的な免責金額の設定で最も多いのは「5-10万円(1回目5万円・2回目以降10万円)」で、三井ダイレクト損保の調査では契約者の55.2%がこの設定を選んでいる。
保険を使わない方が得なケース・使った方が得なケース
判断フローをまとめる。
まず確認すること(この順番で)
- 事故区分の確認:保険会社に「3等級ダウン・1等級ダウン・ノーカウントのどれか」を確認する
- 免責金額の確認:保険証券またはマイページで確認する
- 修理費見積もりを取る:修理工場・ディーラーの2社以上で見積もりを取る
- 計算式に当てはめる:「3年累計増額 + 免責金額 vs 修理費」を計算する
保険を使わない方が有利なケース(目安)
- 軽い擦り傷・小さな凹みで修理費が5〜10万円以下
- 現在の等級が低め(6〜10等級)で損益分岐点が高い
- 免責金額が高く(5〜10万円)、実際の自己負担が少額になる
保険を使った方が有利なケース(目安)
- バンパー・ドア大破など修理費が20万円以上
- フロントガラスの飛び石などの1等級ダウン事故(免責0円なら少額から保険使用が有利)
- もらい事故(相手の対物賠償で修理可能なら、自分の等級に影響しない)
注意:もらい事故(相手方が全て過失の場合)なら自分の保険を使う必要はなく、等級に影響しない。保険会社に相談して相手方の保険で対応できないか確認することが先決だ。
損益分岐点を超えても保険を使うべきでないケース
経済計算だけで判断してはいけない場面がある。
複数回事故の場合:1回目の3等級ダウン後すでに事故有係数が適用中に2回目の事故が起きると、事故有係数適用期間がさらに加算され上限6年に達することがある。等級の回復に非常に長い時間がかかる。
等級が低い状態で事故有になる場合:6等級から3等級へのダウンは保険料が割引から割増(+38%)に転落する。修理費30万円でも3年累計の増額が異常に大きくなるため、家計シミュレーションが必要だ。
翌年の保険乗り換えへの影響:等級は保険会社を変えても引き継がれる(業界横断の情報交換制度あり)。「保険を使って別の会社に乗り換える」という節約は機能しない。
実際の判断は必ず保険会社の試算を取ること:各保険会社は「保険を使った場合・使わなかった場合の3年間の保険料試算」を提供している。本記事の数値はあくまで参考純率ベースの編集部試算であり、実際の保険料は保険会社・商品・車種・年齢等によって異なる。保険会社へ連絡して試算を取ることが最も確実な判断方法だ。
よくある質問
Q1. 保険を使わずに修理すると等級はどうなりますか?
保険を使わなかった場合、次の更新時に等級が1つ上がります(無事故の場合)。例えば、現在15等級なら翌年16等級になり、割引率が少し高くなります。小額修理を自費で済ませると等級維持・向上のメリットが得られます。
Q2. 等級が下がった場合、元に戻るのに何年かかりますか?
3等級ダウン事故の場合、事故有係数適用期間が3年間あります。その後も1年ごとに1等級ずつ回復するため、例えば20等級→17等級になった場合、17等級から20等級に戻るには(事故有係数3年+等級回復3年で)合計約6年かかります。
Q3. 免責金額が高い場合、損益分岐点はどう変わりますか?
免責金額が高いほど損益分岐点が上がります。免責5万円なら3年累計増額に5万円を加えた金額が損益分岐点になります。免責10万円設定では損益分岐点がさらに10万円上積みされ、20〜25万円前後の修理費でなければ保険を使う経済的メリットが出にくくなります。
Q4. 1等級ダウン事故と3等級ダウン事故の損益分岐点の差はどのくらいですか?
事故有係数適用期間が「1年 vs 3年」なので、3年累計増額が大きく異なります。3等級ダウン事故では免責0円でも損益分岐点は最低約6.6万円(20等級・編集部試算)ですが、1等級ダウン事故は事故有係数が1年のみのため損益分岐点が大幅に低くなります。飛び石・盗難などの1等級ダウン事故は保険を使いやすい条件です。
Q5. 軽い擦り傷(5万円以下の修理)は保険を使わない方が得ですか?
多くの場合は自費修理が有利です。特に3等級ダウン事故の場合、免責0円でも損益分岐点は最低約6.6万円(20等級・編集部試算)のため、5万円の修理では保険を使う経済的メリットがありません。ただし、1等級ダウン事故(飛び石等)で免責0円の場合は損益分岐点が大幅に低く、5万円の修理でも保険使用が有利になるケースがあります。
Q6. もらい事故(自分が全く過失のない場合)の場合はどうすればいいですか?
もらい事故(相手方に全て過失がある場合)、自分の保険を使う必要は原則ありません。相手方の対物賠償保険で修理費を請求でき、自分の等級には影響しません。ただし相手が無保険車の場合は別途対応が必要なため、保険会社に相談することをお勧めします。なお、もらい事故でも自分の任意保険のロードサービスが使えるケースがあります。ロードサービス費用 JAF vs 任意保険 損益分岐点も参照してください。
Q7. 保険会社に試算を依頼するとき、何を準備すれば良いですか?
保険証券(等級・免責金額・現在の年間保険料)と、修理工場からの見積もり書があれば試算できます。保険会社に「車両保険を使った場合と使わなかった場合の3年間の保険料比較を教えてください」と伝えると、具体的な金額を教えてもらえます。