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最終更新: 2026-07-27

車は水深何cmまで走れる?JAFの実車テストでわかった冠水路の限界

冠水した道路を「これくらいなら行けそう」と判断するのは危険です。JAFの実車テストでは、水深30cmなら多くの車が走り切れた一方、走り切れた車でもボンネット内部や車内への浸水が起きています。水深60cmではガソリン車が停止し、EVでも複数の警告灯が点灯しました。そして最大の問題は、実際の冠水路は濁っていて水深が見えないことです。

結論:JAFのテスト結果

JAFは2010年(セダン/SUV)と2024年(EV/HV/ガソリン車)の2回、冠水路の走行テストを実施しています。

2024年テスト:EV・HV・ガソリン車(水深30cm)

速度車種結果
10km/hEV / HV / ガソリン車いずれも走り切ることができた
30km/hEV走り切れたが、車体下部のアンダーカバーが外れ、ボンネット内部に浸水
30km/hHV走り切れたが、右後輪のホイールカバーと左前の牽引フックが外れ、ボンネット内部に浸水
30km/hガソリン車走り切れたが、車内とボンネット内部に浸水

2024年テスト:EV・HV・ガソリン車(水深60cm)

速度車種結果
10km/hEV / HV走り切ることができた
10km/hガソリン車走り切れたが、エアクリーナーの一部が濡れていた
30km/hEV走り切れたが、複数の警告灯が点灯
30km/hHV / ガソリン車走り切れたが、エアクリーナーが完全に濡れた(ガソリン車は車内にも大量浸水)
40km/hEV走り切れたが、複数の警告灯が点灯
40km/hHV走り切れたが、走行後にエンジンが停止。複数の警告灯が点灯
40km/hガソリン車走り切れずに28.5m地点で停止。車内に大量浸水

※2024年テストのガソリン車は軽自動車です。テストはプロのスタントマンが運転し、一定の条件で走行できるようにしたうえで実施されました(40km/hは水深60cmのみ実施)。

2010年テスト:セダン・SUV

水深車種速度結果
30cmセダン / SUV10km/h・30km/hいずれも走行可(ただしセダン30km/hではエンジンルームに多量の水が浸入)
60cmセダン10km/h×(31m地点でエンジン停止)
60cmセダン30km/h(10km/hで既に停止したため未実施)
60cmSUV10km/h
60cmSUV30km/h×(わずか10mでエンジン停止)

試験車両はセダンがトヨタ・マークII(2,000cc)、SUVが日産・エクストレイル(2,000cc)です。

セダンは水深60cmでフロントガラスの下端まで水をかぶり、しばらく走れたものの登りのスロープで止まりました。SUVは同じ水深でも10km/hなら走り切れましたが、30km/hではエンジン下部から大量の水が入り、車体が一瞬浮き上がってハンドルを取られています。

テストからわかる3つのこと

1. 速度を上げるほど危険

JAFは2010年テストのまとめで「同じ水深でも、速度が高くなると巻き上げる水の量が多くなり、エンジンに水が入りやすくなる」としています。2024年テストでも、水深60cmでガソリン車(軽自動車)が停止したのは40km/hのときだけでした。

ただしJAFは同時に、**「速度を落とせばある程度まで走行できる可能性はありますが、他の要因でエンジンが止まることもあるので、走りきれるとは限りません」**と警告しています。「ゆっくり走れば大丈夫」ではありません。

エンジンが止まる原因として、JAFはエアインテーク(空気の取り入れ口)を通してエンジン内部に水が入ること、および排気管が水圧で塞がれることの両方を挙げています。

さらに厄介なのは、危険の察知が遅れることです。JAFは「運転席にいる限り、クルマの床面以上の水深であっても、ただちには浸水してきません。そのため、危険を察知するころには、クルマが浮いて前後に動かなくなり」と説明しています。車内が濡れていないうちに、すでに手遅れになっている場合があります。

2. 「走り切れた」=「無事」ではない

2024年テストで注目すべきは、走り切れたケースでもボンネット内部や車内への浸水が多く発生した点です。アンダーカバーやホイールカバー、牽引フックが外れた例もありました。その場は動いても、後から電気系統の不具合や腐食が出る可能性があります。

3. EVなら安全、ではない

JAFは2024年テストの結論として、EVについて「モーターは止まらなかったが、複数のシステム故障の警告が表示された。『エンジンがないから大丈夫』と安易に冠水路に進入するのは危険」と明言しています。HVもエンジンを搭載しているため、ガソリン車と同様のリスクがあります。

最大の問題:水深は見た目でわからない

テストは水深が明確な環境で行われたものです。JAFは実際の冠水路について次のように注意を促しています。

実際の冠水路の場合、濁っていることが多く見た目では水深を判断することが難しい。また、マンホールが開いていることや見えない側溝などさまざまな危険があり、たとえ浅く見えても進入するのは大変危険。

つまり「水深30cmなら大丈夫」という知識は、目の前の水が30cmだと確認できて初めて意味を持ちます。実際にはそれができません。JAFの結論は明快で、「豪雨時は冠水しやすい場所を通らないように、遭遇した場合は安易に進入せず可能な限り迂回しよう」です。

とくにアンダーパス(道路の下をくぐる立体交差)は水がたまりやすく、進入してから深さに気づいても後戻りできません。2019年の台風19号では、首都高速道路のアンダーパスや都心部の地下道が冠水し、車両の立ち往生が相次ぎました。JAFは「高架下や立体交差のアンダーパスなど周囲より低い場所には絶対に進入せず、迂回しましょう」と呼びかけています。

なお、水位が上がってから車で避難するのは大変危険であり、JAFはこれを控えるよう案内しています。避難は水位が上がる前に判断してください。

冠水路で動けなくなったときの脱出手順

JAFが示す手順は次のとおりです。慌てて動くより、順番を守ることが重要です。

  1. 落ち着いてシートベルトを外す(エンジンを前方に積む車は前傾姿勢になります)
  2. 窓ガラスが水面より高い位置にあるうちに、窓を開けて脱出する(屋根に上がるようにして出ます)
  3. 窓もドアも開かない場合は、緊急脱出用ハンマーでサイドガラスを割る
  4. ハンマーがない場合は、車内に水が入って車内外の水位差が小さくなるのを待つ。JAFは「外の水位との差が小さくなるとドアへの水圧も下がり開けやすくなるため、緊急脱出用ハンマーもない場合はこのタイミングで脱出します」としています。「自動車はなかなか沈まないもの」なので、落ち着いて機会をうかがってください
  5. 車が前傾して浮いている場合は、後席のドアなど水圧の影響を受けにくいドアから試す

JAFの2014年のテストでは、後輪が浮いた状態ではドアに強い水圧がかかり開けられませんでしたが、完全に水没して水位差が小さくなった状態では開けることができました。水深60cmでは、ドアを開けるのに通常の5倍近い力が必要だったとされています。

そのため緊急脱出用ハンマーを手の届くところに常備しておくことが重要です。ただし一部車種のサイドガラスはフロントガラスと同様の合わせガラスで、割れない場合がある点にも注意してください。

車から出られたら、車を再始動させようとしないでください。感電や車両火災のおそれがあります。詳しくは「冠水した車のエンジンをかけてはいけない理由」で解説しています。

よくある質問

Q. SUVなら冠水路に強いですか? A. エンジン位置が高いぶん有利ですが、過信は禁物です。2010年テストでもSUVは水深60cm・30km/hでわずか10mで停止しました。同じSUVでも最低地上高は車種ごとに差があります。

Q. エンジンが止まるのはどこから水が入るからですか? A. JAFは、エンジンの吸気口(エアインテーク)が水を吸うことと、排気管が水圧で塞がれることの両方を挙げています。どちらか一方だけを気にしても意味はありません。

Q. 走り切れたら点検は不要ですか? A. 必要です。JAFのテストでは走り切れた車でもボンネット内部や車内に浸水していました。走行後に異常がなくても、早めに整備工場で点検を受けてください。

Q. どのくらいの雨で冠水しますか? A. 短時間の集中豪雨では、排水が追いつかずアンダーパスなどが急速に冠水します。雨量そのものより、その場所が水のたまりやすい構造かどうかが重要です。

Q. 走れそうな水深でも、車から降りられなくなることはありますか? A. あります。国土交通省は、水深がドアの下端にかかると内側からドアを開けることが困難になり、ドア高さの半分を超えるとほぼ開けられなくなるとしています。詳しくは「冠水した車のエンジンをかけてはいけない理由」で解説しています。

参考(一次情報)