冠水した車のエンジンをかけてはいけない理由|国交省が示す3つの対処
台風や豪雨で車が水に浸かったあと、動くかどうか確かめたくなります。しかし国土交通省は、水に浸った車両は外観上問題がなさそうな状態でも、感電事故や電気系統のショート等による車両火災が発生するおそれがあるとして、自分でエンジンをかけないよう注意を促しています。まずやるべきことは、始動ではなくバッテリーのマイナス端子を外すことです。
国土交通省が示す3つの対処
国土交通省は、**「水に浸った車両は、外観上問題がなさそうな状態でも、感電事故や、電気系統のショート等による車両火災が発生するおそれがあります」**としたうえで、次の3つを挙げています。
| # | 対処 |
|---|---|
| 1 | 自分でエンジンをかけない |
| 2 | 使用したい場合には、販売店もしくは最寄りの整備工場に相談する。特にハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)は、高電圧のバッテリーを搭載しているので、むやみに触らない |
| 3 | 使用するまでの間、バッテリーのマイナス側のターミナルを外す(発火するおそれがあるため)。外したターミナルはテープなどで覆い、バッテリーと接触しないようにする |
重要なのは、**「外観上問題がなさそうな状態でも」**という点です。見た目が乾いていても、内部の電装品や配線に水が残っていることがあります。
なお、3番目の端子取り外しについて、国土交通省の記述はHV・EVを除外していません。ただしJAFは「自分でバッテリーを外そうとしたりエンジンをかけたりせず、JAFや販売店、整備工場等に相談する」と案内しています。作業に不安がある場合や高電圧車の場合は、無理をせず相談してください。
なぜエンジンをかけてはいけないのか
理由1:車両火災・感電のおそれ
JAFによれば、キーを抜いていてもバッテリーから直接電気が流れてショートするケースがあります。浸水で電気系統がショートすると発火につながるおそれがあり、だからこそ国交省は始動しないことに加えてマイナス端子を外すことまで求めています。
とくに海水に浸かった場合は要注意です。JAFは「海水は電気を通しやすいため、自動車の電気系統がショートし、車両火災につながる可能性がある」「水が引いた後でも、海水によって電気系統の腐食が進むことでショートし、自然に発火してしまうこともある」と注意を促しています。
理由2:エンジンや電装品が壊れる
国土交通省は、水深と被害の関係を次のように説明しています。
- 水深が床面を超えると、車内に浸水して電気装置が故障するおそれや、マフラーから浸水してエンジンルームが損傷するおそれがある
- 水深が床面以下であっても、走行速度が大きくなると、巻き上げた水や波により吸気口からエンジンに浸水し、最悪の場合エンジンが停止する
車高が低い車ほど影響を受けやすく、EV・HVでは駆動用バッテリーに浸水すると車両が停止するおそれがあるとも指摘されています。
エンジン内部に水が入った状態で始動すると、水は圧縮できないためエンジンが破損することがあります(一般に「ウォーターハンマー現象」と呼ばれます)。「動くか試す」ことが、修理費用を大きく引き上げてしまいます。
また、JAFは冠水した車について「電装系のショート、エンジン破損やブレーキ機構に異常が発生している恐れがあります。各部の点検を行うまでは、エンジンは始動させないでください」としています。仮に動いても、止まれない可能性があります。
理由3:HV・EVは高電圧
国土交通省は、ハイブリッド車(HV)と電気自動車(EV)について「高電圧のバッテリーを搭載していますので、むやみに触らないで下さい」としています。燃料電池車(FCV)も同様に高電圧システムを搭載しており、メーカーによっては「車には触らずに直ちに販売店に連絡を」と案内しています。
前述のとおり、国交省はマイナス端子の取り外しについてHV・EVを除外していませんが、高電圧部には触れないことが前提です。判断に迷う場合はJAFの案内どおり、自分で作業せず販売店・整備工場に相談してください。
実際の手順
- エンジン(システム)を始動しない【国土交通省】
- 安全な場所へ避難する。水が引いていない場所での作業は行わない
- 使用するまでの間、バッテリーのマイナス端子を外し、端子をテープなどで覆って絶縁する【国土交通省】。自分で作業することに不安がある場合、高電圧車の場合は、この作業をせずに次へ進んでください【JAF】
- 販売店または整備工場に連絡し、点検・修理を依頼する【国土交通省】
- 加入している自動車保険会社に連絡する(車両保険の対象になる場合があります。※これは一次情報の範囲外の一般的な手順です)
水が引いたあとに現れる症状
浸水した車は、直後は動いても後から不具合が出ることがあります。
- 電装品の故障・誤作動。国土交通省は、車内への浸水でパワーウィンドウや自動スライドドアが動作しなくなる例を挙げています
- 配線・端子の腐食(とくに海水の場合。JAFは水が引いた後の自然発火のおそれを指摘)
- ブレーキ機構の異常(JAF)
- 室内の水分によるカビ・悪臭(一般に指摘される症状です)
このため、「動いたから大丈夫」と判断せず、必ず点検を受けてください。
知っておきたい:ドアは早い段階で開かなくなる
国土交通省は、水深とドアの開閉について次のように説明しています。
水深がドアの下端にかかると、車外の水圧により内側からドアを開けることが困難となり、ドア高さの半分を超えると、内側からほぼ開けられなくなります。
「まだタイヤの半分くらい」と思える水深でも、車内からの脱出はすでに難しくなっています。冠水路に進入しないことが最大の予防策です。
やむを得ず車から出て徒歩で避難する場合、JAFは「片足を浸け水深を測りながら、次にゆっくりと両足をつき、進んできた方向に歩いて戻りましょう」「マンホールのふたが外れていても分からないこともあるので、一歩一歩、確かめながら歩くことが大切です」としています。
なお、自動車メーカーは取扱説明書などで「冠水路または冠水のおそれがある道路は走行しないでください」と案内しています。どの水深までなら走れるのかというJAFの実車テスト結果は「車は水深何cmまで走れる?」で紹介していますが、走行を推奨するものではありません。
よくある質問
Q. タイヤが少し浸かった程度でもエンジンをかけてはいけませんか? A. 「浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ」の注意喚起は「水に浸った車両」全般に対するもので、水深の下限は示されていません。ただし国土交通省は別途「水深が床面を超えたら、もう危険」として床面を一つの基準に挙げています。判断に迷う場合は、始動せずに販売店・整備工場へ相談してください。
Q. マイナス端子を外すのはなぜですか? A. 使用するまでの間に発火するおそれがあるためです。外した端子がバッテリーに接触しないよう、テープなどで覆う措置も国土交通省が求めています。
Q. HV・EVでもマイナス端子を外していいですか? A. 国土交通省の対処にHV・EVを除外する記載はありませんが、高電圧バッテリーには「むやみに触らないで下さい」とされています。JAFは自分でバッテリーを外さず相談するよう案内しているため、不安があれば作業せず販売店・整備工場に連絡してください。
Q. 保険は使えますか? A. 車両保険に加入していれば、水災による損害が補償される場合があります。契約内容によって異なるため、保険会社に確認してください。
Q. エンジンをかけずに車を移動させたい場合は? A. レッカーでの移動を依頼してください。ロードサービスや保険の付帯サービスが使える場合があります。
参考(一次情報)
- 国土交通省「浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ」 — 2026-07-27取得
- 国土交通省「水深が床面を超えたら、もう危険!」(令和元年11月27日) — 2026-07-27取得
- JAF「自動車が冠水路や高潮で浸水してしまったら?」 — 2026-07-27取得
- JAF「車内まで冠水した自動車の扱いと対処方法」 — 2026-07-27取得
※保険の取り扱い、メーカーごとの推奨手順は、契約先・販売店にご確認ください。カビ・悪臭など出典を明記していない症状は、一般に指摘されるものです。