本記事の法令情報は、NALTEC審査事務規程(最終改正:令和8年(2026年)7月30日 規程第15号)・道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(2025年1月10日改訂版)・道路交通法施行令に基づきます。
この記事の要点
- タイヤのスリップサインとは、残り溝が1.6mm以下になると現れるウエア・インジケータで、露出した状態で車検を受けると保安基準第9条違反で即不合格になる
- スリップサインが出たまま公道を走ると、車検不合格とは別に道路交通法第62条(整備不良車両の運転禁止)が成立し、普通車で反則金9,000円・違反点数2点が課される
- タイヤ4本交換の総額目安は軽自動車(165/55R14)で60,000〜80,000円、普通自動車(205/55R16)で87,000〜126,000円(工賃・廃タイヤ処分費用・バルブ交換込み)
- スタッドレスタイヤのプラットホームが出ても、残りの溝部分が1.6mm以上あれば車検の溝深さ基準はクリアするが、雪上性能は大幅に低下しているため交換が必要
スリップサインは「溝1.6mm=走行危険ライン」を示すタイヤ内部のインジケータで、サイドウォールの▲マークで位置を確認できる
タイヤには溝の中に「ウエア・インジケータ」と呼ばれる突起が設けられており、溝が1.6mm以下になるとこの突起が路面に接地してスリップサインとして現れる。ウエア・インジケータの位置は、タイヤのサイドウォール(側面)に刻印された▲マークを目印に確認する。▲マークの指す方向の溝を覗き込み、突起が路面と同じ高さになっていれば1.6mmを下回った状態だ。
NALTEC審査事務規程7-11-1(3)③・道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第89条第4項第2号では、乗用車・軽自動車・普通車(最高速度40km/h以上の空気入ゴムタイヤ)の接地部全幅において「いずれの部分においても1.6mm以上の深さを有すること」が合格要件と定められている。また同規定は「滑り止めの溝の深さについての判定は、ウエア・インジケータにより判定しても差し支えない」と明記しており、ウエア・インジケータが露出していれば1.6mm基準を下回ったと法令上判断される。
なお二輪自動車・側車付二輪自動車(最高速度40km/h以上)の基準は0.8mm以上(F2)と異なる。また最高速度40km/h未満の自動車や大型特殊自動車には溝深さ基準の適用が除外される(F3)。
スリップサインが出た状態かどうかで「今すぐ違反」「車検不合格のみ」「交換推奨」の3つに状況が分かれる
自分のタイヤが今どの状態かによって、取るべき行動と法的リスクが異なる。下表で状況を確認してほしい。
| 状況 | 法的リスク | 推奨行動 | 費用目安(軽自動車4本) |
|---|---|---|---|
| スリップサイン露出 + 公道走行中 | 道交法第62条違反(普通車: 反則金9,000円・違反点数2点)と車検不合格の両方が成立 | 直ちに走行を停止し、積載車や搬送を手配してタイヤを交換する | 60,000〜80,000円 |
| スリップサイン露出 + 車検前(未走行または走行継続前) | 保安基準第9条違反で車検即不合格。公道を走れば道交法第62条も成立 | 車検前に必ずタイヤを交換する。そのまま検査場へ持ち込まない | 60,000〜80,000円 |
| 残り溝4mm以下(スリップサイン未露出) | 現時点での法的違反はなし | 安全上の観点からブリヂストンは残り溝4mm以下での交換を推奨している | 同上(早めに手配すれば業者・時期選択の余裕あり) |
「スリップサインが出ているかどうか」だけでなく、「公道を今走っているか否か」でリスクの種類が分かれる点に注意が必要だ。
スリップサインが露出したタイヤは保安基準第9条違反で車検を通過できず、整備工場で交換を求められる
道路運送車両の保安基準第9条第2項は「自動車の空気入ゴムタイヤは、堅ろうで、安全な運行を確保できるものとして、強度、滑り止めに係る性能等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない」と規定している。
この「告示で定める基準」が細目告示第89条第4項であり、NALTEC審査事務規程7-11はその審査基準を具体化したものだ。3つの規定の階層関係をまとめる。
| 規定 | 内容 | 1.6mm基準との関係 |
|---|---|---|
| 道路運送車両の保安基準 第9条第2項(e-Gov) | 「強度・滑り止めに係る性能等に関し告示で定める基準に適合」することを要求 | 根拠法(上位)。違反=保安基準第9条違反 |
| 細目告示 第89条第4項第2号(国土交通省・2025年1月10日改訂版) | 「接地部全幅においていずれの部分においても1.6mm以上の深さを有すること」 | 1.6mmの数値根拠 |
| NALTEC審査事務規程 7-11-1(3)③(最終改正:第66次) | ウエア・インジケータによる判定を認める。スタッドレスのプラットホーム部分は計測対象から除外 | 検査場での実務的判定基準 |
スリップサインが露出しているタイヤを持ち込んだ場合、審査員はウエア・インジケータを確認し、細目告示第89条に基づいて不合格と判定する。整備工場や車検場でタイヤ交換を求められるのはこのためだ。
なお、溝深さ以外の合格要件として「亀裂・コード層の露出等著しい破損のないこと」(細目告示第89条第4項第3号・NALTEC 7-11-1(3)④)と「空気圧が適正であること」(同第4項第4号・NALTEC 7-11-1(3)⑤)もある。タイヤのひび割れが深刻な場合はスリップサインの状態にかかわらず別途不合格になりうる。タイヤひび割れの車検基準も参照してほしい。
スリップサインを無視して走れば「車検不合格」と別に道交法第62条の公道走行違反が成立し、反則金9,000円・違反点数2点が課される
保安基準第9条違反(車検)と道路交通法第62条違反(公道走行)は独立して成立する。スリップサインが露出した状態でそのまま公道を走った場合、車検が切れていなくても道交法上の整備不良違反が適用される。
2つの法的リスクの対照表
| 項目 | 車検不合格(保安基準) | 公道走行違反(道交法) |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 道路運送車両の保安基準 第9条第2項 → 細目告示第89条第4項第2号 | 道路交通法 第62条(整備不良車両の運転の禁止) |
| 違反の成立条件 | 検査時にスリップサインが露出している | スリップサイン露出状態で公道を走行している |
| 処分内容 | 車検不合格(継続検査が通らない) | 反則金 + 違反点数(下表参照) |
| 両立するか | 両方が同時に成立する(独立した法的効果) |
反則金・違反点数一覧(整備不良:制動装置等)
道路交通法施行令別表第六第十六号「自動車等整備不良(制動装置等)」の規定による。走行装置(タイヤ)は施行令別表第一備考51により「制動装置等」に含まれる。
| 車種 | 反則金 | 違反点数 |
|---|---|---|
| 大型車 | 12,000円 | 2点 |
| 普通車 | 9,000円 | 2点 |
| 二輪車 | 7,000円 | 2点 |
| 原付等 | 6,000円 | 2点 |
違反点数は施行令別表第二(基礎点数)で「自動車等整備不良(制動装置等)…二点」と定められている。
タイヤ交換にかかる総額は軽自動車6万円台・普通車9万円台が相場で、業者と購入方法で工賃が大きく異なる
タイヤ4本交換の総額は、タイヤ本体・工賃・廃タイヤ処分費用・エアバルブ交換費用で構成される。ブリヂストン タイヤオンラインストアが公表している車種別の費用目安は以下のとおりだ。
車種別タイヤ4本交換総額の目安
| 車種 | タイヤサイズ例 | 費用目安(4本・工賃込み) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 軽自動車 | 165/55R14 | 60,000〜80,000円 | ブリヂストン タイヤオンラインストア公表値 |
| 普通自動車(セダン・コンパクト) | 205/55R16 | 87,000〜126,000円 | 同上 |
| ミニバン | 205/60R16 | 71,000〜115,000円 | 同上 |
※ タイヤ銘柄・グレード・購入先によって本体価格が大きく変動するため、上記は目安の範囲。
費用の内訳と相場
費用の内訳ごとの相場(ブリヂストン タイヤオンラインストア公表値)を以下に示す。
| 費用項目 | 相場 | 条件 |
|---|---|---|
| タイヤ交換工賃(4本) | 約4,000円〜(カー用品店・ガソリンスタンド) / 約8,000円〜(カーディーラー・タイヤ専門店) | 1台分4本。店舗・業者の種別により異なる |
| 廃タイヤ処分費用 | 200〜600円/1本(4本で800〜2,500円程度) | 店舗により異なる |
| エアバルブ交換費用 | 200〜1,000円/1本(4本で800〜4,000円程度) | ゴムバルブかTPMSバルブかで大きく差が出る |
なお、タイヤ館(ブリヂストン系チェーン)の店舗料金ページ(生駒店・池上店)に掲載されている工賃は、軽・普通車17インチ以下(タイヤ購入時)でパック料金(組替・脱着・バランス・バルブ・廃タイヤ処理込み)が2,750円/1本(11,000円/4本)となっている。お持ち込みタイヤの場合は別途確認が必要だ。
費用を抑えるポイント
カー用品店(約4,000円〜/4本)とタイヤ専門店・ディーラー(約8,000円〜/4本)では工賃だけで4,000円前後の差が生じる。タイヤ本体をネット購入して持ち込みで工賃だけ依頼する方法もあるが、持ち込み料が別途かかる店舗もあるため事前確認が必要だ。スタッドレスタイヤ交換工賃の詳細比較も参考にしてほしい。
スタッドレスタイヤのプラットホームが出ても車検基準上は1.6mm以上あれば合格だが、雪上性能は大幅に落ちているので交換が必要
スタッドレスタイヤには「プラットホーム」と呼ばれる摩耗インジケータがあり、これが現れた状態は新品時の溝深さの約50%が摩耗した状態を意味する(ブリヂストン推奨の交換目安)。
ただし、プラットホームと車検の1.6mm基準は別物だ。NALTEC審査事務規程・細目告示第89条第4項第2号の括弧書きでは、溝深さの計測対象は「サイピング・プラットホーム・ウエア・インジケータの部分を除く凹部」と定められている。つまりプラットホーム自体は計測から除外されており、プラットホームが露出していても、それ以外の凹部(残りの溝部分)が1.6mm以上あれば車検の溝深さ基準を満たす。
| 基準 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| プラットホーム(スタッドレス固有) | 新品時溝深さの約50%摩耗で出現。この時点でブリヂストンは交換を推奨 | ブリヂストン公表値 |
| 1.6mm基準(車検・保安基準共通) | 接地部全幅の溝深さがいずれの部分においても1.6mm以上であること。スタッドレスにも同様に適用される | 細目告示第89条第4項第2号・NALTEC 7-11-1(3)③ |
プラットホームが出た状態のスタッドレスタイヤは、法律上は1.6mm以上の溝が残っていれば車検に通る。しかし雪上・氷上でのグリップ性能は新品時より大幅に低下しており、ブリヂストンはこの時点での交換を推奨している。「車検に通ればよい」と判断するのは安全上の観点から避けたい。
タイヤの寿命判断はスリップサインだけでなく製造年週・ひび割れ・変形も合わせて確認することで不要な交換を防げる
スリップサインが出ていなくても、以下の条件に当てはまる場合は交換を検討すべきだ。
| 確認項目 | 交換・点検の目安 | 根拠 |
|---|---|---|
| 残り溝4mm以下 | 安全上の観点から交換を推奨 | ブリヂストン公表値(S5) |
| 製造から5年経過 | タイヤ専門店での点検を推奨(外観上問題がなくても) | ブリヂストン公表値(S5)。起点は製造年週 |
| 使用開始後5年経過 | できるだけ早く専門店で点検を受けることを推奨 | ブリヂストン タイヤオンラインストア公表値(S6)。起点は使用開始日 |
| 製造から10年経過 | 外見上問題がなくても交換を推奨 | ブリヂストン公表値(S5・S6)。起点は製造年週 |
| 亀裂・コード層の露出・著しい破損 | 車検合格要件を満たさないため直ちに交換(スリップサインの状態にかかわらず) | 細目告示第89条第4項第3号・NALTEC 7-11-1(3)④ |
タイヤの製造年月日はサイドウォールに刻印された4桁の数字で確認できる。製造から5年の点検推奨(ブリヂストン推奨・製造年週起算)と使用開始後5年の点検推奨(ブリヂストン推奨・使用開始日起算)は起点が異なるため、長期保管後に使用したタイヤでは両方を確認することが重要だ。
よくある質問
Q1. スリップサインが出ているかどうかはどうやって確認すればよいですか?
タイヤのサイドウォール(側面)に刻印された▲マークを探し、その▲が指す方向の溝を確認する。溝の中にある小さな突起(ウエア・インジケータ)が溝と同じ高さまたは接地面と面一になっていれば、残り溝が1.6mm以下でスリップサインが出ている状態だ。目視での確認が難しい場合は、タイヤ専門店やカー用品店で無料点検を依頼できる。
Q2. スリップサインが出ているタイヤで車検を受けるとどうなりますか?
道路運送車両の保安基準第9条・細目告示第89条第4項第2号の「1.6mm以上」基準に違反するため、即不合格となる。整備工場・車検場でタイヤ交換を求められ、交換後に再検査を受けることになる。車検費用とは別にタイヤ交換費用が発生するため、車検前にスリップサインに気づいた場合は事前に交換しておくとよい。
Q3. スリップサインが出たタイヤで今日走ってもいいですか?
走行は推奨できない。スリップサインが露出した状態での公道走行は、道路交通法第62条(整備不良車両の運転の禁止)違反にあたり、普通車で反則金9,000円・違反点数2点が課される。これは車検の有効期限とは独立して成立する。直ちにタイヤを交換するか、搬送を依頼して走行を避けること。
Q4. スタッドレスタイヤのプラットホームが出たら車検は通らないのですか?
プラットホームが出ていても、プラットホーム以外の溝(凹部)が1.6mm以上残っていれば車検の溝深さ基準(細目告示第89条第4項第2号)はクリアする。プラットホーム部分は計測対象から除外されることが同条文の括弧書きで定められているためだ。ただし、プラットホームが出た状態は雪上・氷上での性能が大幅に低下しているため、ブリヂストンは新品時溝深さの約50%摩耗(プラットホーム出現)を交換目安として推奨している。
Q5. タイヤ交換の費用を少しでも安くする方法はありますか?
工賃はカー用品店・ガソリンスタンドで約4,000円〜(4本)、タイヤ専門店・カーディーラーで約8,000円〜(4本)が目安(ブリヂストン タイヤオンラインストア公表値)。タイヤ本体をネット通販で購入して持ち込み工賃のみ支払う方法もあるが、店舗によっては持ち込み料が割増になる場合がある。また廃タイヤ処分費(1本200〜600円程度)やエアバルブ交換費(1本200〜1,000円程度)は別途かかる場合が多いため、見積もりの際は総額で比較することが重要だ。
Q6. タイヤのスリップサインが出ていなくても車検で不合格になるケースはありますか?
ある。溝深さ以外に「亀裂・コード層の露出等著しい破損のないこと」(細目告示第89条第4項第3号)と「空気圧が適正であること」(同第4項第4号)も合格要件となっている。タイヤ側面や接地面に深いひび割れがあってコード(内部繊維)が見えている状態、あるいはバースト痕・著しい変形がある場合も不合格の対象となりうる。