この記事の要点
- 対物賠償保険の支払いの上限は、相手の車の時価額。修理費が超えても、支払いは通常「時価額まで」(東京海上日動の公表条件)
- 超過分は対物超過修理費用特約で出る場合がある。4社(損保ジャパン・東京海上日動・SOMPOダイレクト・東京海上ダイレクト)の公表条件は、限度額50万円・修理した場合に限る、の点で共通する。過失割合を乗じる算式は損保ジャパン・東京海上日動・東京海上ダイレクトの3社で、SOMPOダイレクトは「責任割合に応じて最大50万円」
- 例(東京海上日動パンフ記載の計算例。時価60万円・修理100万円・過失80%)では、特約があれば保険から80万円、なければ48万円。特約がなければ超過分40万円は保険から出ず、特約があれば超過分のうち32万円が出る(編集部算出)
- 自分の車は、損保ジャパンでは「修理費が車両保険金額以上」で全損(東京海上日動も同じ区分)。SOMPOダイレクトの定義は確認できていない。特約は修理が前提のものが多いので、修理に出す前に特約の有無と期限を確認する
自分がどの立場かで、式に入れる過失割合と特約の確認先が変わる
結論: 修理費が時価額を超えそうなときは、まず「相手の車を壊した側」「壊された側」「自分の車が古い側」のどれかを決めます。立場によって、見る保険と、式に入れる過失割合が違います。
| 立場 | 見る保険 | 式に入れる過失割合 | 特約の確認先 | 修理しないと特約は出るか | 読む章 |
|---|---|---|---|---|---|
| 相手の車を壊した側 | 自分の対物賠償保険 | 自分の過失割合 | 自分の保険証券 | 出ない(修理した場合に限る) | 3・4章 |
| 自分の車を壊された側 | 相手の対物賠償保険 | 相手の過失割合 | 相手の保険会社(自分では決められない) | 自分の車を修理せず乗り換えると、相手の特約は出ない | 3・4章 |
| 自分の車が古い側(自損・自分の保険を使う) | 自分の車両保険 | 該当しない | 自分の保険証券 | 車両全損修理時特約は修理が前提(SOMPOダイレクトの条件) | 5章 |
根拠:
- 東京海上日動の対物超過修理費特約は、損害が生じた日の翌日から6か月以内に修理を行ったときに限る
- 損保ジャパンの対物全損時修理差額費用特約は、事故発生日の翌日から1年以内に相手の車が修理された場合に限る
- 損保ジャパンの特約は、相手の車の車両保険など他の保険金で超過分が補償される場合は支払対象外。壊された側から見ると、自分の車両保険で超過分が出る場合は相手の特約の対象外
- 相手の車を壊された側が相手に請求できる額の法的な範囲は、この記事では断定しません。ここで言えるのは「相手の対物賠償保険の支払いは、通常は時価額まで」という保険側の条件です
事故直後のレッカーや現場対応は、別記事のロードサービス費用 JAF・保険 比較にまとめています。
壊された側が確認したい弁護士費用特約
自分の車を壊された側が、相手との示談交渉を弁護士に頼みたいときは、自分の保険の弁護士費用特約を確認します。公式ページで確認できた3社の条件は次のとおりです。
| 保険会社 | 弁護士費用等の限度額 | 法律相談・書類作成費用 | 等級への影響 |
|---|---|---|---|
| 損保ジャパン(THE クルマの保険。2026年7月1日以降始期契約の概要) | 1事故1被保険者あたり300万円 | 1事故1被保険者あたり10万円(被害事故の法律相談・書類作成費用) | 等級は下がらない(ノーカウント事故) |
| SOMPOダイレクト(おとなの自動車保険) | 1事故につき被保険者1名あたり300万円 | 1事故につき被保険者1名あたり10万円 | 弁護士費用特約のみを使用した場合はノーカウント事故 |
| 東京海上ダイレクト | 1事故かつ補償の対象となる方1名につき300万円(法律相談費用もこの限度内) | 左に含む | 弁護士特約のみを利用した場合、等級・事故有係数適用期間に影響なし |
- 損保ジャパンの公式FAQでは、自分の財物(自動車など)を壊された場合の相手への損害賠償請求費用が対象に挙がっています。東京海上ダイレクトの例にも「追突され自分のクルマが壊れ、示談交渉を弁護士に依頼した場合」があります
- 公式ページには、時価額を超える修理費の請求に使えるかどうかの記載がありません。使えるとは言えないので、保険会社に確認してください
- 損保ジャパンの「自動車事故限定型」は、被害事故の損害賠償請求の範囲が自動車起因に限られます。自分の契約が限定型かどうかは約款・証券で確認してください
- 東京海上日動など上の3社以外の弁護士費用特約は、この記事では扱いません
修理費が時価額を超えても、相手の車への保険の支払いは通常「時価額まで」で止まる
結論: 対物賠償保険の支払いの上限は、相手の車の時価額です。修理費がそれを超えても、対物賠償保険は通常、時価額までしか払いません。
時価額とは、事故の時点でその車にどれくらいの値打ちがあるかを金額にしたもので、算定方法は保険会社や事案で変わります。修理費がこの時価額を超える状況は、いわゆる「経済的全損」の場面です(自分の車の全損の定義は保険会社ごとに別で、後の章で扱います)。
東京海上日動の対物賠償責任保険のページには「相手方の財物の時価額を超える修理費をお支払いすることはできません」とあります。損保ジャパンの公式FAQも、相手の車の年式が古い場合などに修理代が時価額を超えることがあり、通常は時価額までしか支払われない、という趣旨で説明しています。
時価額の算定方法は保険会社や個別の事案で変わるため、この記事では一つの方法に決めつけません。 「修理費」は、事故直前の状態に復旧するために実際に必要な費用です(損保ジャパンの特約の注意事項)。
東京海上日動パンフレットの計算例では、相手方の車の時価額が60万円、実際の修理費が100万円で、時価額を超える差額は40万円(修理費−時価額)です。
差額の40万円は対物賠償保険では出ません。この差額を埋めるのが、次の章の特約です。
超過分は対物超過修理費用特約で出るが、限度額・修理期限・過失割合・修理が前提の4条件を満たす場合に限る
結論: 超過分の受け皿は対物超過修理費用特約(会社により名称は違います)です。公表条件を確認できた4社では、限度額は50万円で、修理した場合に限ります。超過分に過失割合を乗じるのは損保ジャパン・東京海上日動・東京海上ダイレクトで、SOMPOダイレクトは責任割合に応じます。
各社の公表条件は2026年10月5日に取得しました。損保ジャパンの概要は2026年7月1日以降始期契約のものです。他社の契約や別の始期の契約は条件が違う場合があるので、自分の保険会社の行を引いてください。
| 保険会社・特約 | 限度額 | 支払額の算式 | 修理の期限 | 修理が前提か | 自動セットか |
|---|---|---|---|---|---|
| 損保ジャパン「対物全損時修理差額費用特約」 | 50万円 | 差額分の修理費×被保険者の過失割合(50万円限度) | 事故発生日の翌日から1年以内 | 相手の車が修理された場合に限る | 対物賠償責任保険を適用した契約に自動セット |
| 東京海上日動「対物超過修理費特約」 | 1事故につき相手方の車1台あたり50万円 | 差額分の修理費×補償を受けられる方の過失割合 | 損害が生じた日の翌日から6か月以内 | 修理を行った場合に限る | 本記事では確認できていない(契約で確認) |
| SOMPOダイレクト「対物全損時修理差額費用特約」 | 責任割合に応じて最大50万円 | 責任割合に応じる | 損害が生じた日の翌日から1年以内(正当な理由があれば超えても可) | その損傷が修理された場合に限る | 契約で確認 |
| 東京海上ダイレクト「対物超過特約」 | 50万円 | 超過分の修理費×補償の対象となる方の過失割合(50万円限度) | 6か月以内に修理を行った場合に限る | 修理を行った場合に限る | 契約で確認 |
4社とも、修理した場合に限る条件があります。修理せずに買い替えや廃車に進むと、特約は出ません。損保ジャパンは、相手の車の車両保険など他の保険金で超過分が補償される場合も対象外です。ただし、補償されない差額があれば、その部分には特約が適用されます。
「保険を使うと翌年以降の保険料がどうなるか」は、この記事では深掘りしません。事故修理 保険 損益分岐で、等級ダウンと修理費の損得を計算しています。
過失80%・時価60万円・修理100万円の例では、特約があれば保険が80万円を払い、なければ48万円にとどまる
結論: 東京海上日動パンフの計算例(過失80%)では、特約の有無で保険から出る額が32万円違います。ただし、超過分×過失割合が50万円を超えると、特約は50万円で頭打ちになります。
この例は、東京海上日動パンフレット記載の計算例です。過失80%は、補償を受ける側(特約の被保険者)である自分の過失割合で、相手方は20%です。一般的な値ではありません。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 対物賠償保険が時価額分に払う額 | 時価額60万円×過失80% | 48万円 |
| 対物超過修理費特約が差額分に払う額 | 超過40万円×過失80%(50万円以内) | 32万円 |
| 特約ありの保険からの合計(編集部算出) | 48万円+32万円 | 80万円 |
| 特約ありでも保険で賄われない額(編集部算出) | 修理費100万円−80万円 | 20万円(相手方の過失20%分に相当) |
自分の数字に読み替えるときの式は次のとおりです。東京海上日動パンフの計算例(時価額分は時価額×過失割合、差額分は超過分×過失割合で50万円限度)に基づく編集部の読み替えで、すべての保険会社・事案に当てはまる一般則ではありません。
保険から出る額 = 時価額×過失割合 + min(超過分×過失割合, 50万円) (特約なしは前半のみ。超過分=修理費−時価額) 保険から出ない額 = 修理費 − 保険から出る額
SOMPOダイレクトは「責任割合に応じて最大50万円」という公表条件なので、同じ式で見積もったうえで、保険会社に確認してください。
立場別の入れ方は次のとおりです。
- 壊した側: 自分の過失割合・相手の車の見積もりと時価額・自分の保険の特約の有無を入れる。時価額と過失割合は保険会社に提示された値を入れる。過失割合がまだ決まっていなければ、複数の割合で幅を見る
- 壊された側: 相手の過失割合・自分の車の見積もりと時価額を入れる。相手の保険に特約があるかは、相手の保険会社に確認する。自分の車を修理せず乗り換えると、相手の特約は出ない
判断の境界は50万円です。 超過分×過失割合が50万円を超えるなら、超えた分は保険から出ません。誰がその分を負担するかは、この記事では断定しません。古い車で修理費との差が大きいほど、この頭打ちに当たりやすくなります。
自分の車は「修理費が車両保険金額以上」で全損になり、超過分は車両全損修理時特約の有無で変わる
結論: 自分の車では、損保ジャパンは修理費が車両保険金額以上で全損とします(東京海上日動も同じ区分)。車両保険金として出るのは車両保険金額までで、新車の価格ではありません。全損時諸費用と上乗せ特約は別枠です。
損保ジャパンの車両保険では、修理ができない場合、または修理費が車両保険金額以上となる場合が全損です。全損のとき支払われるのは、契約時に決めた車両保険金額(協定保険価額)です。
| 項目 | 損保ジャパン(THE クルマの保険) | 東京海上日動 | SOMPOダイレクト(おとなの自動車保険) |
|---|---|---|---|
| 全損の定義 | 修理ができない、または修理費が車両保険金額以上 | 修理費が車両保険金額以上・盗難で発見されない・修理できない、の3区分(車両全損時諸費用の定義) | 本記事では確認できていない |
| 全損時の諸費用 | 車両保険金額の10%または10万円のいずれか高い額(20万円限度) | 車両保険金額の10%(上限20万円・下限5万円。自動セット)。倍額払特約の場合は20%(上限40万円・下限10万円) | 本記事では確認できていない |
| 修理費が車両保険金額を超えた分の上乗せ | 車両全損時復旧費用特約(車両保険金額が新車価格相当額の50%未満が条件。限度額は車両保険金額の2倍または車両保険金額+100万円のいずれか低い額。1年以内の再取得・修理が支払要件) | 本記事では確認できていない | 車両全損修理時特約(50万円を限度に上乗せ) |
| 条件 | 車両保険適用が条件。盗難は対象外 | 保険金額5万円未満は不担保などの但し書きあり | 保険始期日の属する月が初度登録(検査)年月の翌月から起算して25か月を超えている場合にセット可。「修理して乗り続ける」ことが前提で、廃車する場合は車両保険金額のみ |
自分の車は、対物と違って「過失割合を乗じる」条件は表に出てきません。代わりに、車両保険の契約の中身(車両保険金額・特約の有無)が金額を決めます。表の「本記事では確認できていない」の欄は、自分の保険証券か保険会社で確認してください。
修理に出す前に、特約の修理期限(6か月・1年)と時効3年を確認する
結論: 特約の修理期限は、東京海上日動・東京海上ダイレクトが6か月、損保ジャパン・SOMPOダイレクトが1年です。見積もりが高くて迷っているうちに過ぎないよう、日付を確認します。
| 期限 | 内容 | 条件 |
|---|---|---|
| 6か月以内 | 東京海上日動は損害が生じた日の翌日から。東京海上ダイレクトは6か月以内に修理した場合に限る(起算日は本記事では確認できていない) | 東京海上日動・東京海上ダイレクトの特約 |
| 1年以内 | 事故発生日の翌日から(損保ジャパン)/損害が生じた日の翌日から(SOMPOダイレクト。正当な理由があれば超えても可) | 各社の対物全損時修理差額費用特約 |
| 3年 | 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効。損害および加害者を知った時から。物損にも適用 | 民法724条1号 |
| 20年 | 不法行為の時から | 民法724条2号 |
3年と20年は、保険の特約ではなく、損害賠償請求権の時効(民法724条)の話です。物損は、人の生命・身体の侵害とは違い、5年にはなりません。
急いで修理に出す前と、示談を急ぐ前に、次の2点を確認しておくと安全です。
- 特約の起算日と期限(自分の保険証券か保険会社で確認)
- 相手の車の車両保険など、ほかの保険金で超過分が出る見込みがあるか(損保ジャパンの特約はその場合対象外)
修理するか乗り換えるかは「特約の有無・車両保険金額・修理が前提かどうか」の3点で決める
結論: 特約は修理が前提なので、先に特約の有無を確認してから修理に出すか乗り換えるかを決めます。保険を使うかどうかの損得は、別記事に任せます。
| 避けたい判断 | こうすればOK |
|---|---|
| 特約を確認せずに修理に出す(あとで超過分が出ないと分かる) | 修理に出す前に、保険会社に特約の有無・限度額・期限を確認する |
| 廃車や買い替えに進んだあとで特約を当てにする(SOMPOダイレクトの車両全損修理時特約は、廃車なら車両保険金額のみ。対物の特約も修理した場合に限る) | 修理しない場合に出る額と、修理した場合に出る額を並べてから決める |
| 自分の車の修理費を、車両保険金額を超えても全額出ると考える(車両保険金として出るのは車両保険金額まで。全損時諸費用と上乗せ特約は別枠) | 修理費が車両保険金額以上か、全損時諸費用や車両全損修理時特約があるかを見る |
確認の手順は4つです。
- 立場を決める(壊した側・壊された側・自分の車が古い側)
- 保険会社に特約の有無と期限を確認し、自分の数字を式に入れて、保険から出る額と出ない額を概算する
- 壊した側は、相手に修理期限と、修理しないと特約が出ないことを伝える。壊された側は、相手の保険会社に特約の有無と期限を確認する。自分の車が古い側は、自分の保険証券で全損時の扱いを確認する
- 修理に出すか乗り換えるかを決める
乗り換えて廃車の手続きに進むときは、廃車 費用 自分で 手続きで費用と手順を確認できます。保険を使う場合の等級の損得は、事故修理 保険 損益分岐を見てください。
よくある質問
Q1. 修理費が時価額を超えたら、超過分は誰が払いますか
対物賠償保険の支払いは、通常は時価額までです(東京海上日動・損保ジャパンの公表条件)。超過分は、対物超過修理費用特約があれば、超過分に過失割合を乗じた額を、50万円を限度に支払う条件です。それを超える分や特約がない場合の扱いは、この記事では断定しません。
Q2. 対物超過修理費用特約は自動で付いていますか
損保ジャパンの「THE クルマの保険」では、対物賠償責任保険を適用した契約に自動セットされます。ほかの会社は、本記事の公表条件では確認できていないので、保険証券や保険会社で確認してください。
Q3. 相手の車を修理せず買い替えた場合、特約は使えますか
東京海上日動・東京海上ダイレクト・損保ジャパン・SOMPOダイレクトの4社とも、修理した場合に限る条件です。修理せずに買い替えると、使えません。期限は、東京海上日動・東京海上ダイレクトは6か月以内、損保ジャパン・SOMPOダイレクトは1年以内です(起算日は、東京海上日動と SOMPOダイレクトが損害が生じた日の翌日、損保ジャパンが事故発生日の翌日。東京海上ダイレクトは6か月以内に修理した場合に限る。SOMPOダイレクトは正当な理由があれば超えても可)。
Q4. 過失割合が低い場合、特約の支払いはどうなりますか
損保ジャパン・東京海上日動・東京海上ダイレクトは、超過分の修理費に過失割合を乗じた額が支払額です。ここでの過失割合は、特約の被保険者(壊した側)のものです。壊された側から見ると、相手の過失割合が高いほど受け取る額は大きくなります。計算例は、東京海上日動パンフ記載の過失80%・時価60万円・修理100万円で、特約が32万円です。
Q5. 物損の損害賠償はいつまで請求できますか
民法724条では、損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効にかかります。物損は、生命・身体の侵害に適用される5年の延長の対象ではなく、3年です。
Q6. 自分の車の修理費が車両保険金額を超えたらどうなりますか
損保ジャパンでは、修理費が車両保険金額以上になると全損で、車両保険金として支払われるのは契約時に決めた車両保険金額(協定保険価額)です。新車相当額ではありません。SOMPOダイレクトの車両全損修理時特約があれば、修理して乗り続ける場合に限り、50万円を限度に上乗せされます。