この記事の要点
- 走行距離が過去記録より小さくなった場合、車検証備考欄に「走行距離記録最大値」が記載される。距離差の存在だけでは偽装かどうか断定できず、3項目と根拠書類を照合する必要がある
- 電子車検証の走行距離計表示値・旧走行距離計表示値・走行距離記録最大値は、無料の車検証閲覧アプリで確認できる(オンライン時はPDF出力も可能)
- 点検整備記録簿には点検時の総走行距離が記載されており、日付・車台番号と合わせると車検記録の間の履歴も確認できる
- 距離の逆転や根拠書類が揃わない場合は契約を保留して販売店に確認を求め、購入後に食い違いが分かった場合は契約書類を整理して販売店に申し出るのが最初の手順
距離差だけで偽装と断定できないため、表示と記録を分けて照合する
令和8年(2026年)9月15日時点。
走行距離の数値が過去記録より小さくなっている場合でも、それだけで「故意の偽装」とは断定できない。メーター交換や記録誤りの可能性があるためだ。
景品表示法(昭和37年法律第134号)第5条は、事業者が品質等について実際よりも著しく優良であると示し、消費者の合理的な選択を阻害するおそれがある表示を禁止している(F1)。ただし個別の走行距離表示が同条に該当するかどうかは、それぞれの事実関係に基づいて判断される。
走行距離がメーター交換等により過去記録より小さくなった場合、平成29年(2017年)1月から、車検証備考欄に「走行距離記録最大値」が記載されるようになった(F3・F4)。この項目が記載されていること自体は偽装の確定を意味しない。過去の車検時に記録された最大値を参照したに過ぎない場合もある。
また、車検証備考欄に記録された過去の走行距離を訂正するためには、正しい走行距離が確認できる根拠書類が必要であり、書類がなければ訂正できない(F6)。書類の有無と内容を確認することが、偽装かどうかを判断する前提となる。
判断の進め方は「表示値がおかしい→即座に偽装と決める」ではなく、「3項目と根拠書類を照合し、食い違いがあれば販売店に確認する」という順序で行う。
電子車検証の3項目と現在のオドメーターを同じ車両で照合する
令和8年(2026年)9月15日時点。
電子車検証の備考欄で確認できる走行距離に関する3項目は、走行距離計表示値・旧走行距離計表示値・走行距離記録最大値である(F5)。これらと現在のオドメーターを同じ車両で並べて照合することが、記録と表示の整合を確認する基本手順だ。
電子車検証のICタグに記録された情報は、国土交通省が提供する無料の車検証閲覧アプリで確認できる(F9)。アプリをオンラインモードで使用し、インターネット通信が可能な状態であれば、自動車検査証記録事項と同じ内容をPDF形式で出力することもできる(F10)。
以下の表で、3項目・現在のオドメーター・点検整備記録簿の記録を時系列で照合する流れを整理する。
| 確認元 | 確認できる値 | 確認方法 | 食い違いがあった場合 |
|---|---|---|---|
| 電子車検証3項目(走行距離計表示値) | 最新車検時のオドメーター値 | 車検証閲覧アプリ/PDF | 前回車検値との差を確認 |
| 電子車検証3項目(旧走行距離計表示値) | メーター交換前の最終値 | 車検証閲覧アプリ/PDF | 走行距離記録最大値と照合 |
| 電子車検証3項目(走行距離記録最大値) | 過去記録の中の最大値 | 車検証閲覧アプリ/PDF | 根拠書類の有無を販売店に確認 |
| 現在のオドメーター | 照合時点の距離 | 車内メーター目視 | 車検証3項目との整合を確認 |
| 点検整備記録簿 | 点検時の総走行距離(日付付き) | 記録簿を直接確認 | 日付と距離の増分が自然かを照合 |
距離が逆転している場合や、走行距離記録最大値が記載されている場合でも、偽装と即断するのではなく、根拠書類の有無と内容を販売店に確認してから判断する。
点検整備記録簿の総走行距離を日付順に並べると車検時以外の履歴も補える
点検整備記録簿には点検時の総走行距離が記載されており、日付・車台番号・実施者の情報と合わせて確認する(F7)。車検は2年ごとだが、6か月点検・12か月点検の記録があれば、車検と車検の間の走行履歴を補完できる。
- 日付・車台番号・実施者が記録簿と一致しているか
- 記録された走行距離が日付順に増加しているか
- 電子車検証の走行距離計表示値と、直近の点検時の総走行距離が整合しているか
自家用乗用自動車等の点検整備記録簿は、自動車への備え付けと2年間の保存が義務付けられている(F8)。国土交通省は可能な限り長期保存を推奨しているが、2年分を超える古い記録は手元にない場合もある。記録が手元にない場合は、記録簿自体の有無を含め、その理由を販売店に確認する。
記録簿に記載された走行距離だけで偽装を断定するのではなく、電子車検証3項目との時系列照合の補完材料として使う。
年式・内外装・消耗品の違和感は断定材料にせず、記録照合へ戻るきっかけにする
年式に対してシートの摩耗が激しい、ペダルゴムの擦れが多い、ステアリングの握り跡が深いといった外見上の気づきは、走行距離の記録照合へ進む「きっかけ」として扱う。外見だけで走行距離の偽装を断定することはできない。
メンテナンスノートや交換ラベル(エンジンオイル・エアフィルター等の交換記録)も同様に、車検証3項目や点検整備記録簿と組み合わせて確認する参考情報だ(F4・F5・F7)。交換ラベルの距離数が電子車検証の走行距離計表示値と大きくかけ離れている場合は、販売店に追加の書類確認を求める根拠にはなる。
ただし、内外装の状態はオーナーの使い方(主に高速道路走行か、長距離長期保管か)によって同一距離でも大きく差が出る。消耗品の摩耗度だけで「この距離は嘘だ」と結論を出すのは、確認作業の代わりにはならない。
外見で違和感を覚えたら、まず電子車検証3項目の確認へ、次に点検整備記録簿の照合へと戻る。
距離が逆転するか根拠書類が揃わない間は契約を保留して販売店へ確認する
距離の整合が取れないまま契約を進めることは、購入後に問題が明らかになったときに交渉が難しくなるリスクがある。書類が揃うまで契約を保留し、販売店に確認を求めるのが適切な手順だ。
以下の表で、状況別の避けたい判断と、こうすればOKの行動を整理する。
| 状況 | 避けたい判断 | こうすればOK | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 内外装の摩耗が気になる | 外見だけで「偽装だ」と決める | 電子車検証3項目と記録簿を確認してから判断する | F4・F5・F7 |
| 走行距離記録最大値が記載されている | 即座に偽装と断定して交渉を打ち切る | 記載理由と根拠書類の有無を販売店に確認する | F4・F6 |
| 距離が車検ごとに逆転している | 見なかったことにして契約を進める | 正しい走行距離が確認できる書類を販売店に求める | F6 |
| 根拠書類を見せてもらえない | 「まあいいか」と押し切られる | 書類が揃うまで契約を保留する | F6 |
| 書類が揃い整合が取れた | 全て問題ないと思い込む | 契約書記載の走行距離と実測値の一致を最終確認する | F4・F5 |
販売店への確認で解決しない場合や、書類の提示を断られた場合は、専門家または消費生活相談窓口に相談することも選択肢になる。
購入後の食い違いは自動的な取消しと決めず、契約資料と確認事実を整理して販売店へ申し出る
令和8年(2026年)9月15日時点。
購入後に走行距離の食い違いに気づいた場合でも、契約が自動的に取り消されるわけではない。消費者契約法(平成12年法律第61号)第4条第1項第1号は、事業者が契約勧誘時に重要事項について事実と異なることを告げ、消費者がそれを誤認して契約した場合に取消しを認めている(F11)。ただし、走行距離の相違だけで自動的に要件が成立するとは断定できず、個別の事実関係を確認する必要がある。
まず取るべき手順は次のとおりだ。
- 契約書・見積書・販売店が提示した資料(カタログ・Web掲載情報を含む)を手元に集める
- 走行距離として告知された値と、購入後に確認した実際の値(電子車検証3項目・記録簿)との差を整理する
- 整理した内容を書面または記録が残る方法で販売店に申し出る
販売店に申し出たことと、その応答内容は記録しておく。口頭のやり取りだけでは後の相談が難しくなる。
販売店との話合いで解決しないときは消費生活センター等か業界団体へ相談する
令和8年(2026年)9月15日時点。
販売店との話合いで解決しない場合、相談先として消費生活センター等や業界団体の相談窓口がある(F14)。
相談先が分からない場合は、消費者ホットライン「188」に電話すると、身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してもらえる(F12・F13)。ただし188はナビダイヤルであり、通話料が発生し得る。消費者庁の相談窓口へ直接つながる番号ではなく、最寄りの窓口を案内するためのサービスだ。
| 段階 | 整理する資料 | 申出・相談先 | 次のステップ |
|---|---|---|---|
| 販売店へ申出 | 契約書・走行距離の記録(電子車検証PDF・記録簿写し)・告知された値 | 購入した販売店 | 対応内容を書面で記録する |
| 話合いで解決しない | 販売店とのやり取りの記録 | 消費生活センター等または業界団体相談窓口 | 188で最寄り窓口を確認できる |
| 専門的な判断が必要 | これまでの全資料 | 消費生活センター等・弁護士・業界団体 | 消費者契約法上の要件を確認する |
中古自動車の購入・売却のトラブルでは、消費生活センター等および業界団体の相談窓口が対応する(F14)。188への電話で案内された窓口に資料を持参し、事実を整理した上で相談するのが効率的だ。
なお、中古車 初めて 購入の全体手順については別記事を参照してほしい。また、売却時の走行距離に関する一般的な判断については売り時 走行距離で解説している。
よくある質問
Q1. 内装やペダルの摩耗だけで走行距離の偽装を見分けられますか?
外見の摩耗状態は偽装の断定材料にはならない。使い方や保管環境によって、同じ走行距離でも摩耗の程度は大きく異なるためだ。内装・ペダル・ステアリングの状態で違和感を覚えたときは、電子車検証の走行距離計表示値・旧走行距離計表示値・走行距離記録最大値の3項目と、点検整備記録簿の総走行距離を確認するきっかけとして扱う(F4・F5・F7)。外見だけで判断を終わらせず、記録との照合へ進むことが重要だ。
Q2. 電子車検証では走行距離をどこで確認できますか?
電子車検証のICタグに記録された情報を確認するには、国土交通省が提供する車検証閲覧アプリを使う(F9)。アプリは無料で利用でき、スマートフォンで電子車検証のICタグを読み取ると走行距離関連の3項目を確認できる。アプリをオンラインモードで使用し、インターネット通信が可能な状態であれば、PDF形式でも出力できる(F10)。購入検討中の車両の電子車検証を販売店で見せてもらい、アプリで読み取る方法が現実的だ。
Q3. 照合する3項目は何ですか?
電子車検証の備考欄で確認できる走行距離の3項目は「走行距離計表示値」「旧走行距離計表示値」「走行距離記録最大値」だ(F5)。走行距離計表示値は最新車検時のオドメーター値、旧走行距離計表示値はメーター交換前の最終値、走行距離記録最大値は過去記録の中の最大値をそれぞれ示す。この3項目を現在のオドメーターおよび点検整備記録簿の記録と時系列で並べて照合する。
Q4. 点検整備記録簿は何年分残っていますか?
自家用乗用自動車等の点検整備記録簿は、自動車への備え付けと2年間の保存が義務付けられている(F8)。そのため、手元にある記録簿は直近2年分が基本となる。国土交通省は可能な限り長期保存を推奨しているが、2年分を超える記録は手元にない場合もある。
Q5. 走行距離記録最大値があれば偽装車ですか?
走行距離記録最大値は、車検時の走行距離が過去記録より小さくなった場合に車検証備考欄に記載される項目であり、平成29年(2017年)1月から運用が始まった(F3・F4)。この項目が記載されていること自体は、故意の偽装を意味しない。メーター交換や過去の記録誤りによる場合もあるため、走行距離記録最大値を確認したら、訂正に必要な根拠書類の有無を販売店に確認する(F6)。書類が揃い、経緯が説明できる場合は偽装ではない可能性がある。
Q6. 購入後に距離の相違が分かれば契約を取り消せますか?
状況によって異なるため、要件を確認してから判断する必要がある。消費者契約法第4条第1項第1号は、事業者が重要事項について事実と異なることを告げ、消費者がそれを誤認して契約した場合に取消しを認めている(F11)。ただし、走行距離の相違があるだけで自動的に要件が成立するわけではない。告知内容・誤認の有無・事実関係によって判断が変わるため、まず契約書類と確認した事実を整理して販売店に申し出る。取消しの要件の判断が難しい場合は消費生活センター等に相談するのが適切だ。
Q7. 販売店との話合いで解決しないときはどこへ相談できますか?
相談先として、消費生活センター等や業界団体の相談窓口がある(F14)。相談先が分からない場合は消費者ホットライン「188」に電話すると、身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してもらえる(F12・F13)。188はナビダイヤルであり、通話料が発生し得る点に注意が必要だ。相談時には、契約書・走行距離の記録(電子車検証PDF・記録簿の写し)・販売店とのやり取りの記録を持参すると、状況を正確に伝えやすくなる。