走行距離課税はいつから・いくら? 2026年度は見送り確定、今後の議論を整理
まず結論
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 2026年度の導入 | 見送り確定 |
| 政府の公式見解 | 「政府として具体的に検討していない」(2025年11月12日・片山さつき財務相) |
| 導入時期 | 未定(具体的なスケジュールなし) |
| 税率・税額 | 未定(具体的な案なし) |
| 議論の背景 | ガソリン暫定税率廃止(2025年12月末)による年間約1兆〜1.5兆円規模の財源不足 |
| 今後の動向 | 令和9年度(2027年度)以降の自動車税制見直し議論に含まれる可能性あり |
走行距離課税とは何か
走行距離課税(走行税とも呼ばれる)は、実際に走行した距離に比例して税金を課す仕組みです。「道路を使った分だけ公平に負担する」という考え方に基づいています。
現行の日本の自動車税制では、ガソリン・軽油に含まれる揮発油税(本則税率28.7円/L+旧暫定税率25.1円/L)が道路インフラ維持の主要財源でした。しかし電気自動車(EV)はガソリンを使わないため、この税負担が発生しません。EVが普及するほど税収が減り、同じ道路を使いながら負担が不公平になるという問題が生じています。
また、2025年12月末にガソリン・軽油の暫定税率が廃止されたことで(ガソリン25.1円/L・軽油17.1円/Lの削減)、年間1兆〜1.5兆円規模の財源が失われました。走行距離課税は、この穴を埋める代替財源の候補の一つとして名前が挙がっています。
日本では2022年ごろから政府の税制調査会などで議論が始まりましたが、現在も検討段階にすぎず、具体的な法案や制度設計は存在しません。
2026年度は見送り確定——財務相発言の経緯
最も重要な事実はここです。
2025年11月12日の参議院予算委員会で、片山さつき財務相は国民民主党・榛葉賀津也氏の質問に対し、次のように答弁しました。
「車は走るためにある。走行距離に課税するとあんまりだという声は伺っている。走行距離課税について、政府として具体的に検討をしておりません」
これは閣僚が国会の場で明言したものであり、2026年度(令和8年度)税制改正では走行距離課税を導入しないことが確定しています。
与党内の反応も同様で、与党税調幹部からは「誰も望んでいない」「仮に議論になったら明確に反対だ」という声が上がりました。財務省幹部も「技術的に問題・論点があり、今年末に決められるような話ではない」と述べています(複数報道による)。
仮に導入された場合、いくらになるか(試算シナリオ)
繰り返しますが、税率・税額は現時点で未定です。 以下はあくまで参考として、諸情報を元にした試算シナリオです。政府が公式に提示した数字ではありません。
仮想税率の参考値
海外事例や一部専門家・報道による試算では、2〜4円/km程度のレンジが参考値として言及されています。
| 仮の税率 | 年間5,000km走行 | 年間10,000km走行 | 年間20,000km走行 |
|---|---|---|---|
| 2円/km | 10,000円 | 20,000円 | 40,000円 |
| 3円/km | 15,000円 | 30,000円 | 60,000円 |
| 4円/km | 20,000円 | 40,000円 | 80,000円 |
日本の乗用車の平均年間走行距離は概ね8,000〜12,000km程度です。3円/kmの場合、年間10,000km走行では年額30,000円(月額換算2,500円)の負担になります。
地方在住者・物流業者への影響が大きい
走行距離課税の問題として特に指摘されるのが、地方在住者や運送・物流業者への負担集中です。都市部では公共交通が発達し車の使用頻度が低いのに対し、地方では生活・仕事での移動距離が長く、走行距離課税の負担が大きくなります。
これが「誰も望んでいない」という与党幹部の言葉の背景でもあります。
参考:海外の導入事例
| 国・地域 | 税率(概算) | 備考 |
|---|---|---|
| アメリカ・オレゴン州 | 約3円/km(1.9セント/マイル) | 2015年から実施。任意参加制 |
| ニュージーランド | 重量×距離ベース | 1,000kmあたり最低5,000円程度〜 |
| ドイツ・オーストリア等 | 重量・距離ベース | 主にトラック・商用車が対象 |
日本での導入は乗用車全体を対象とすることが議論されており、海外事例と単純には比較できません。
今後の議論の見通し
現時点(2026年8月)での状況をまとめます。
確実なこと:
- 2026年度(令和8年度)の導入はなし
- 具体的な制度設計・法案・スケジュールは存在しない
不確実なこと(「検討中」の状態):
- 令和9年度(2027年度)以降の自動車税制の抜本見直しの一環として、将来的に議論に上がる可能性はある
- ガソリン暫定税率廃止後の財源不足問題が長期化すれば、議論が再燃する可能性がある
政府の公式スタンスは「現時点で検討していない」ですが、道路財源不足という構造問題は解決していません。令和9年度税制改正(2026年末に大綱が見込まれる)で自動車税制の方向性が示される見通しであり、その動向が次の注目点です。
EVの課税との違い——混同しやすい2つの議論
走行距離課税とは別に、EV向けの重量税特例加算の議論があります。こちらは令和8年度税制改正大綱で方針が決まっており、別の制度です。
| 走行距離課税 | EV重量税特例加算 | |
|---|---|---|
| 状況 | 検討していない(財務相明言) | 2028年5月施行の方針あり |
| 対象 | 全車種(ガソリン車含む) | EV・PHEVの自家用乗用車 |
| 課税基準 | 走行距離 | 車両重量×車検 |
| 税額 | 未定・具体案なし | 未定(令和9年度改正で決定予定) |
EVに乗っていてどちらの課税が自分に関係するか気になる方は「EVの重量課税は2028年5月から」も参照してください。
カーリースへの影響
走行距離課税が将来的に導入された場合、カーリース(車のサブスク)ユーザーへの影響も気になるところです。
カーリース契約では走行距離の上限(設定距離)が定められており、超過すると超過料金が発生します。走行距離課税が導入されれば、この設定距離内での走行に対してもさらに課税負担が加わる可能性があります。
ただし、走行距離課税はまだ「検討していない」段階です。現在のカーリース契約への影響はなく、今後の制度動向を注視するにとどまります。カーリースの走行距離管理については「カーリースの走行距離超過はいくら?」で詳しく解説しています。
よくある質問
Q. 走行距離課税はいつから始まりますか?
A. 未定です。2025年11月12日に財務相が「政府として具体的に検討していない」と国会で明言しており、2026年度の導入はありません。将来の議論に含まれる可能性はありますが、具体的なスケジュールは存在しません。
Q. 走行距離課税の税率・税額はいくらですか?
A. 未定です。政府の公式案がないため、税率・税額は一切決まっていません。報道や専門家による試算では2〜4円/km程度が参考値として言及されることがありますが、これは推測です。
Q. EVは走行距離課税の対象になりますか?
A. 制度が導入された場合は全車種が対象になると想定されています(ガソリン車も含む)。ただし現時点では導入自体が「検討していない」段階です。EVへの別の課税(EV重量税)については別記事で解説しています。
Q. ガソリン車なら走行距離課税が導入されても負担は変わらないですか?
A. 走行距離課税はガソリン車にも課税される想定です。ただしガソリン暫定税率廃止(2025年12月末)によりガソリン代が1L当たり25.1円分安くなっており、仮に走行距離課税が導入されても一定の相殺関係になる可能性があります。現時点では両者の正確な比較は税率が未定のため困難です。
Q. いつ情報が確定しますか?
A. 自動車税制の抜本見直しの行方は令和9年度税制改正(2026年末の大綱見込み)で方向性が示される見通しです。ただし走行距離課税が議題に上がるかどうかも現時点では不明です。
(2025年11月12日・片山さつき財務相の参院予算委答弁を収録)
※本記事は2026年8月20日時点の情報に基づきます。走行距離課税は現時点で**「政府として具体的に検討していない」段階です。制度の具体案・導入時期・税率はいずれも未定**であり、今後の政府・税制調査会の議論によって変わる可能性があります。